葬式でネックレスなしはマナー違反か|真珠がない日の整え方

訃報が届いて、喪服は何とかなった。靴も黒がある。ただ、真珠のネックレスがない。時計は明日の午前で、店が開くのを待っていたら間に合わない。

先に結論を置く。ネックレスなしで参列して問題はない。付けていないことを咎められる場面は、実際にはほとんど起きない。

初めての本格的な参列で、パールを持っておらず、借りるのも気が引けてアクセサリーなしで行った女性がいた。会場に着くと年配の女性たちの多くが一連の真珠を付けていて、自分の首元だけ寂しく見えた。それでも受付でも親族からも、何ひとつ指摘されないまま終わったという。

首元より先に整えるべき箇所がある。

  • 靴とバッグに光沢や金具がないか
  • ストッキングが黒の無地か
  • 髪がまとまっていて、爪に色がないか
  • 香水や柔軟剤の匂いが強くないか

この四つが揃っていれば、ネックレスの有無で浮くことはない。

目次

ネックレスなしは、マナー違反にならない

付けない選択が咎められる場面はほとんどない

付けていないと社会常識がないという扱いをされることもある、という話を後から聞いて少し後悔した、と先の女性は振り返っていた。この種の言葉は、実際の会場ではなく、後日どこかで耳に入ってくることが多い。

葬儀の場で他人の首元を検分している人は、まずいない。遺族は挨拶と段取りで手一杯で、参列者は焼香の順番を気にしている。誰かの装いが記憶に残るとしたら、それは光っていたか、色がついていたか、音を立てていたかのいずれかであって、何もなかったことは記憶に残らない。

華美を避けたいという理由であえて付けない人もいる。何もないという状態は、装いの原則からいえば最も外れにくい選択になる。

実際は半々に近い

持っているのに付け忘れ、出かける直前に気づいたがもう時間がなく、そのまま行った人がいた。会場で見渡すと、付けている人と付けていない人が半々くらいで、意外と気にならなかったという。

地域による差もある。葬式でアクセサリー類を何も付けていない人が多い地域だ、と感じた人もいた。

家族葬が広がって、血縁以外の葬儀に参列する機会そのものが減った。喪服に真珠という組み合わせを目にする回数が減れば、それを当然と考える人も減っていく。数十年前の基準がそのまま生きている場面のほうが、いまは少なくなっている。

なぜ真珠だけが許されているのか

光り物を外すという原則がある

弔事の装いには、単純な原則がひとつある。光るものを身につけない。金や宝石は華やかさを示すもので、悲しみの場にそぐわないという考え方だ。結婚指輪だけは例外として残す。男性のネクタイピンやカフスボタンも外す、とされるのはこの原則の延長になる。

その中で真珠だけが認められているのは、光り方が違うためだ。石を削って光を反射させるのではなく、貝の内側で層が重なってできた柔らかい艶になる。加えて、涙をかたどったものとして語られてきた背景がある。悲しみを表すものとして日本で唯一許されている装身具、という言い方をする人もいる。

つまり真珠は、付けるべきものというより、付けてもよいものとして位置づけられている。この違いは大きい。義務ではなく許可の側にあるものは、なくても欠けたことにならない。

二連を避けるのは重ねないという考え方から

一連までなら問題なく、二連は不幸が重なるとされるので避ける。この説明は広く共有されている。同じ発想で、香典を包む札を重ねない、法要の日取りを重ねないといった配慮が置かれてきた。

真珠の色は白のほか、黒真珠も弔事に使われる。加えてオニキスなど黒い石も許容される場合がある。ただ、ここまで気にする段階に来ている人は、そもそもネックレスを持っている人だ。持っていない側が覚えておく必要はない。

実際に見られているのは、首元ではない

昨日が葬式だったので全身黒とアクセサリーなしで過ごし、その日いろいろな人に会ったが、誰ひとりお葬式のようだとは言わなかった、と話していた人がいた。葬式帰りだと伝えても、だからその服なのか、と反応する人すらいなかったという。

黒の上下にアクセサリーなしという状態は、それだけ目立たない。逆に言えば、目立つ要素は別のところに潜んでいる。

靴とバッグの光沢

弔事で最も見られやすいのが足元になる。黒であっても、エナメルの光沢があるもの、金具が付いたもの、留め具が光るものは浮く。ヒールが高すぎるもの、音が響くものも避ける。

バッグは黒の布製が基本になる。革は殺生を連想させるという理由で避ける考え方があり、光沢のある革やブランドのロゴが目立つものは特に外れる。

ストッキングと髪と爪

ストッキングは黒の無地を選ぶ。柄物や網目の入ったもの、極端に厚手のものは合わない。夏でも素足は避ける。

髪は顔にかからないようにまとめ、焼香で前かがみになったときに落ちない状態にしておく。ここが乱れていると、動作のたびに視線が集まる。

爪はいちばん見落とされる箇所になる。焼香では手が正面に出るので、色や飾りがあると必ず見える。落とす時間がなければ、ベージュの絆創膏を巻いてしのぐ方法もある。

香りと音

香水は付けない。柔軟剤や整髪料の匂いが強いものも避ける。狭い会場では線香の香りと混ざる。

音も同じで、バッグの金具、靴、腕時計のブレスレットが立てる音は、静まった場ではよく響く。腕時計は外すのが無難だが、付けるなら黒か地味な革のベルトで、文字盤が小さいものを選ぶ。

あえて外したほうがいい場面

小さい子どもを連れて行くとき

一歳の子どもを抱いて二親等の葬儀に参列した女性が、真珠のネックレスを引きちぎられた。珠が床に散らばり、家柄的に明るい雰囲気の葬儀だったので大事にはならなかったが、しんみりした場だったら詰んでいた、と振り返っている。

抱っこする距離にいる子どもにとって、首元で揺れる白い珠は握るために存在しているようなものだ。子連れの参列では、最初から付けないほうが安全になる。マナーとして正しいかどうかより、その場を乱さないことのほうが優先される。

留め具が緩いもの、体に合わないもの

久しぶりに出したネックレスの留め具が弱っている場合がある。焼香の列で外れて落ちれば、拾う音のほうが目立つ。試しに引いてみて不安があるなら、置いていく。

買う、借りる、なしで行くの判断

今後の参列回数で決める

いま持っていない人が取れる道は三つになる。今夜のうちに決めるなら、基準は簡単だ。

今後も年に一度以上こうした場に出る見込みがあるなら、後日でいいので一本用意しておく。当面その予定がないなら、今回はなしで行く。借りる選択は、気軽に頼める相手がいる場合に限る。訃報の直後に貸してほしいと連絡を入れる行為そのものが、相手の負担になることがある。

借りるのが気が引けてなしで行った人、買ってまで付ける必要はないと感じた人。どちらも判断として間違っていない。

模造真珠でも問題ない

本真珠でなければ失礼だという決まりはない。冠婚葬祭用として売られている模造真珠で十分に通る。量販店や紳士服店の礼服売り場、通販でも数千円から手に入る。

急ぎで探すなら、翌朝に開く店として礼服を扱う量販店を当たる。ただし、朝の慌ただしい時間に買いに走って遅刻するくらいなら、なしで行って落ち着いて着席するほうがいい。装いの不足より、遅れて入って場を乱すことのほうが目に留まる。

男性と学生の場合

男性は、そもそもネックレスを付けない。整えるのは別の箇所になる。ネクタイは黒無地で、光沢のあるものは避ける。ネクタイピンとカフスボタンは外す。靴とベルトは黒で、金具が目立たないものにする。結婚指輪は付けたままでいい。

学生は制服がそのまま礼装になる。制服がない場合は、白のシャツに黒か紺の落ち着いた服で足りる。子どもも同様で、無理に黒で揃える必要はない。学校指定の靴や靴下が白であっても、そのままで構わない。

過度に神経質にならず、清潔で地味な装いを心がければ足りる。これが、実際に何度も参列してきた人たちの共通した実感になっている。首元にあるかないかより、静かにその場にいられるかどうかのほうが、ずっと見られている。

葬式にネックレスなしで参列してもマナー違反になりませんか

なりません。真珠は付けるべきものではなく、光り物を外すという原則の中で例外的に付けてもよいとされているものなので、なくても装いとして欠けたことになりません。実際の会場では付けている人と付けていない人が半々に近く、指摘されることはほとんどありません。

なぜ真珠だけが葬儀で許されているのですか

宝石のように光を鋭く反射せず、柔らかい艶にとどまることと、涙をかたどったものとして悲しみを表す装身具と語られてきた背景があるためです。金や宝石は華やかさを示すものとして外し、結婚指輪だけが例外として残ります。男性のネクタイピンやカフスボタンを外すのも同じ原則によります。

真珠の二連はなぜ避けるのですか

不幸が重なるという言い方をされるためで、一連までとするのが通例です。同じ発想から、香典で札を重ねないといった配慮も置かれてきました。長さは首元に収まる短めのものが弔事用とされ、胸元まで垂れるものは避けます。

本真珠でなくても大丈夫ですか

模造真珠で問題ありません。冠婚葬祭用として量販店や礼服売り場、通販で数千円から手に入ります。素材で判断されることはなく、一連で短めという形が守られていれば足ります。

ネックレスがない場合、代わりに何を整えればいいですか

靴とバッグに光沢や目立つ金具がないか、ストッキングが黒の無地か、髪がまとまっていて爪に色がないか、香水や柔軟剤の匂いが強くないかを確認してください。焼香では手が正面に出るため、爪はとくに見えます。落とす時間がなければ、ベージュの絆創膏を巻く方法もあります。

子どもを連れて行く場合はどうすればいいですか

抱っこする距離に子どもがいる場合は、最初から付けないほうが安全です。実際に一歳児に引きちぎられて珠が床に散らばった例があり、静かな場では収拾がつきません。マナーの形より、その場を乱さないことが優先されます。

腕時計は外したほうがいいですか

外すのが無難です。付ける場合は文字盤が小さく、黒か地味な革のベルトのものを選び、金属のブレスレットは避けてください。静まった会場では金具の音がよく響くため、バッグや靴の金具も同様に注意します。

男性や学生はどうすればいいですか

男性はネックレスを付けず、黒無地のネクタイを締め、ネクタイピンとカフスボタンを外します。靴とベルトは黒で金具が目立たないものにし、結婚指輪は付けたままで構いません。学生は制服がそのまま礼装になり、制服がない場合は白のシャツに黒か紺の落ち着いた服で足ります。

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この記事を書いた人

シニア向け雑誌の人生相談コーナーの担当として、これまで1000通を超える読者の手紙を読んできました。悩みの多くは、分かってくれる相手が欲しいのだと知りました。定年後の空白、体力の変化、新しい人付き合い。人生後半は終わりではなく仕切り直しの時期です。

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