50代で妻を亡くした男性は、その後どう暮らしているのか手続き、生活、再婚まで

52歳で妻を病気で亡くした男性は、娘と二人の暮らしを始めた。最初はがむしゃらに家事と育児をこなした。他人に哀れまれたくなくて、無理に笑顔を作っていたという。

七年が過ぎた今は生活が落ち着き、心にも余裕が出てきた。天国の妻に心配をかけたくない、娘と心から笑えているよ。そう話している。

この年代で妻を亡くすと、三つのことが同時に来る。生活が回らなくなること。時間が余ること。そして、この先をどう生きるか決めなければならないこと。

順番がある。先に生活を立て直し、次に余った時間を人以外のもので埋める。人に向かうのは、そのあとになる。この順番を飛ばした人が、後で苦しんでいる。

目次

最初の一年に起きること

哀れまれたくなくて、笑顔を作る

多くの人が最初にやるのが、これになる。職場でも親族の前でも大丈夫な顔をする。心配されるより、平気に見えるほうが楽だからだ。

先の52歳の男性も、無理に笑顔を作っていたと振り返っている。がむしゃらに動いていたのは、悲しみに向き合う時間を作らないためでもあった。

この対処は間違っていない。ただし、演じている時間が長いほど疲労が溜まる。家に帰ってから何もできなくなるのは、そのせいであることが多い。

家事の中身が分からない

妻を亡くして初めて一人暮らしになった男性は、トイレの掃除の仕方すら知らなかったという。

炊事、洗濯、掃除。手順を知らないだけでなく、洗剤がどこにあるか、ゴミの日がいつか、通帳がどこにしまってあるかも分からない。三十年一緒に暮らしていても、家の運営が片方に寄っていれば、残された側には情報が何も残らない。

情けなく感じる必要はない。知らないだけで、覚えれば済むことになる。ただし、覚えるまでの数か月は確実に消耗する。

天井を見つめる時間が長くなる

夜が長い。話し相手がいないので、テレビをつけても意味が入ってこない。

先の男性は、天井を見つめる時間を減らすよう心がけていたと話している。この言い方に、この時期のすべてが入っている。悲しみそのものより、悲しみを考える時間の長さが人を削る。

加齢とともに体が動かなくなり、買い物や自炊が負担になって弁当を買う生活になった人がいる。孤食が続き、気分が落ちる日があったという。ここまで来ると、意志の問題ではなくなる。眠れない日が続く、食べられない、朝が特につらいという状態が二週間以上続くなら、内科でも心療内科でも一度診てもらったほうがいい。

空いた時間は埋めていい。ただし人では埋めない

人生最後かもしれないという焦り

50歳で妻を亡くした男性が、15歳年下のシングルマザーと交際を始めた。ところが自分をコントロールできなくなり、会うたびに、これが人生最後かもしれないという気持ちで臨むようになった。

相手を喜ばせたいという焦りから関係が歪み、最終的にカウンセリングを受けている。若い頃のような勢いはなくなり、心身の変化を痛感したという。

この人が悪かったわけではない。空いた穴が大きすぎるときに、そこへ人を入れると、入れられた側が持ちこたえられない。相手は穴の大きさに見合う何かを求められ続けることになる。

犬を迎えた男性が学んだこと

十五年前に妻を亡くし、子どもが独立した後に初めて犬を迎えた男性がいる。躾がうまくできずに戸惑ったそうだ。

完璧主義だった自分が、生き物のペースに合わせることを覚えた。散歩の時間、食事の時間、体調の変化。相手の都合で自分の一日が動くようになり、生活にリズムが生まれた。

犬でなくてもいい。畑でも、決まった曜日の教室でも、通う先が一つあれば時間は形を持つ。要点は、こちらの都合で中止できない予定を作ることになる。

人以外で埋めてから、人に向かう

再婚した人たちの話を並べると、順番が見えてくる。仕事を続けた。家事を覚えた。趣味や生き物で時間に形をつけた。そのうえで、人に向かっている。

穴が小さくなってから人に会うと、相手は相手として見られる。穴が大きいまま会うと、相手は埋める材料として見られる。本人にその自覚はなくても、相手には伝わる。

手続きと、お金のこと

期限のある手続き

  1. 死亡届。死亡を知った日から7日以内
  2. 世帯主の変更届。14日以内。ただし残る世帯員が一人なら不要になる
  3. 健康保険と介護保険の資格喪失手続き。14日以内
  4. 準確定申告。相続の開始を知った日の翌日から4か月以内
  5. 相続放棄や限定承認をする場合は、3か月以内
  6. 相続税の申告と納付は10か月以内
  7. 不動産の相続登記は3年以内。2024年から義務になった
  8. 生命保険の請求は3年で時効になる

高額療養費の払い戻し、埋葬料や葬祭費の支給も、申請しなければ受け取れない。役所の窓口で、亡くなった後の手続き一覧をもらっておくと漏れが減る。

50代の夫には、遺族厚生年金が出ないことがある

ここが最も知られていない。

現行の制度では、妻を亡くした夫が遺族厚生年金を受け取るには、妻の死亡当時に夫が55歳以上である必要がある。55歳未満なら受給権そのものが発生しない。55歳以上60歳未満でも、実際に支給が始まるのは60歳からになる。

夫が亡くなった場合、妻は30歳以上なら無期限で受け取れる。この差が長く残ってきた。

つまり、53歳で妻を亡くした男性には、遺族厚生年金が出ない。生活設計を立てるとき、この前提を先に確認しておく必要がある。

2028年4月から男女差が解消される

2025年6月に成立した改正で、この扱いが変わる。2028年4月から、夫の55歳以上という年齢条件が廃止される。

同時に、子のいない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金は、男女とも原則5年の有期給付に統一される。60歳以上で死別した場合は、男女とも従来どおり無期の給付になる。男性は一斉に新制度が適用され、女性については20年ほどかけて段階的に移行する。

自分の場合にいくら出るのかは、生年月日と死亡の時期で変わる。年金事務所に予約して、年金手帳や基礎年金番号が分かるものを持って相談するのが確実になる。無料で試算してもらえる。

子どもがいる場合に使えるもの

18歳到達年度末までの子がいれば、遺族基礎年金の対象になる。2014年4月から父子家庭も受け取れるようになった。子がいて遺族基礎年金を受け取れる場合は、55歳から60歳の間でも遺族厚生年金が支給される。

児童扶養手当も父子家庭が対象になる。所得の制限があるので、市区町村の窓口で確認する。子どもの学費については、高校や大学ごとに死別世帯向けの減免や奨学金がある。

生活を自分で回せるようにする

掃除と食事の最低ライン

全部を覚えようとすると挫折する。最低ラインだけ決める。

  • 洗濯は週二回。曜日を決めて固定する
  • 掃除は水回りだけを週一回。他は月一回でいい
  • 米を炊けるようにする。それだけで食費と栄養がかなり安定する
  • 作れる料理を三品だけ持つ。汁物、炒め物、卵料理のあたりで足りる
  • 掃除機と洗剤の場所を紙に書いて貼る。探す手間が消える

週に一度だけ家事代行を頼む選択もある。数千円で、一週間分の負担が変わる。

孤食を減らす

一人で食べる日が続くと、食事そのものが雑になる。弁当と菓子で済ませる日が増え、そこから体調と気分の両方が落ちていく。

週に一回でいい。誰かと食べる予定を入れる。子どもでも、職場の同僚でも、近所の定食屋の常連でもいい。会話がなくても、人のいる場所で食べるだけで違う。

仕事を続けることの意味

52歳の男性は、仕事を続けることが救いになったと話している。

この年代で妻を亡くすと、退職を考える人がいる。ただ、仕事は収入だけでなく、朝起きる理由と、話す相手と、一日の形を同時に供給している。三つが一度に消えると、生活が持たない。

辞めるなら、辞めた後の一日をどう埋めるかを先に決めてからにする。

再婚を考えたとき

恋愛ではなく、人生の共同経営として見る

53歳の男性は、趣味ゼロ、特技なしと自分を卑下していた。それでも一年二か月の婚活を経て、54歳の女性と再婚している。

決め手は安心感と誠実さだった。これから一緒に趣味を見つけましょう、と相手から提案されて関係が深まったという。本人は、恋愛としてではなく人生の共同経営として捉えたことが成功の鍵だったと振り返っている。

この枠組みが、罪悪感をかなり軽くする。亡くなった妻の代わりを探すのではなく、これからの二十年を一緒に運営する相手を探す。別の役割なので、比べる必要がない。

半年で決まった54歳がやったこと

40代で離婚した後に仕事へ没頭し、50代でこのまま一人で年を重ねるのは寂しいと感じて相談所に登録した男性がいる。同じ50代で離婚歴のある女性と出会い、半年で成婚した。

やったことは四つだった。

  • 清潔感を整えた
  • 等身大の自分を見せ、大きく見せようとしなかった
  • 娘との関係を早い段階で伝えた
  • 老後資金の話を、交際の早いうちにした

過去を引きずらず、これからをどう生きるかを語り合える関係が心地よかったという。

亡くなった妻の話をどう扱うか

隠さなくていい。三十年連れ添った相手をなかったことにすると、自分の人生の三十年分を隠したまま付き合うことになる。

この年代の相手は、たいてい死別か離別を経験している。だから、話しても受け止められる。命日に墓参りをする、写真をそのまま飾っておく。それを承知で一緒にいてくれる人が、本当に合う相手になる。

ただし、比較の材料として持ち出すのは別の話になる。前の妻はこうだった、という形で出すと、相手は誰にも勝てない相手と競わされる。思い出として話すのはよく、基準として使うのはよくない。

一人で暮らすと決めた人へ

再婚しない選択も、同じだけ現実的な道になる。

ある男性は、失ったことを数えるのをやめ、今できることに目を向けたのが自立の第一歩だったと話している。仕事で社会との接点を保ち、身の回りを整え、経済的に自立する。それだけで生活は成り立つ。

ただし、一人で暮らすと決めたなら、備えは早めに動かす。緊急連絡先を誰にするか。判断ができなくなったときに誰が決めるか。任意後見や、医療についての意向を書き残しておくこと。子どもがいるなら、通帳と保険の在り処だけでも共有しておく。

誰にも会わない日が三日続いたら、外に出る用事を一つ作る。それが最も安上がりな保険になる。

妻がいた頃の生活には戻らない。戻らないものを数えるのをやめた時点から、次の暮らしが始まっている。天井を見ている時間より、犬の散歩や、米を研ぐ時間のほうが長くなれば、それでいい。

Q. 50代で妻を亡くした夫は遺族年金を受け取れますか

現行の制度では、妻の死亡当時に夫が55歳未満だと遺族厚生年金の受給権が発生しません。55歳以上60歳未満でも、実際の支給は60歳からになります。18歳到達年度末までの子がいれば遺族基礎年金の対象になり、その場合は55歳から60歳の間でも遺族厚生年金が支給されます。

Q. 遺族年金の制度は変わるのですか

2028年4月から夫の55歳以上という年齢条件が廃止され、男女差が解消されます。同時に、子のいない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金は男女とも原則5年の有期給付になります。60歳以上で死別した場合は従来どおり無期の給付です。

Q. 亡くなった後の手続きで期限が短いものは何ですか

死亡届が7日以内、世帯主の変更届と健康保険の資格喪失が14日以内、相続放棄が3か月以内、準確定申告が4か月以内、相続税の申告が10か月以内です。生命保険の請求は3年で時効になり、不動産の相続登記は2024年から3年以内の義務になりました。

Q. 家事が何もできません。どこから手をつければいいですか

洗濯を週二回、水回りの掃除を週一回に固定し、米を炊けるようにするところから始めてください。作れる料理は三品で足ります。週に一度だけ家事代行を頼むと、数千円で一週間の負担が変わります。

Q. 一人の食事が続いています。何か対策はありますか

週に一回でいいので、誰かと食べる予定を入れてください。孤食が続くと食事の内容が雑になり、体調と気分の両方が落ちていきます。会話がなくても、人のいる場所で食べるだけで違いが出ます。

Q. 再婚を考えるのは早すぎるでしょうか

時期に決まりはありません。ただし空いた時間を人で埋めようとすると、相手が持ちこたえられずに関係が歪みます。会うたびに人生最後かもしれないという焦りで臨み、カウンセリングを受けることになった例があります。仕事や家事、生き物の世話で時間に形をつけてから人に向かった人のほうが落ち着いています。

Q. 新しい相手に亡くなった妻の話をしてもいいですか

隠さなくてかまいません。この年代の相手はたいてい死別か離別を経験しており、受け止められます。ただし、前の妻はこうだったという比較の形で出すと、相手は勝てない相手と競わされます。思い出として話すのと、基準として使うのは別です。

Q. 眠れない日や気分の落ち込みが続いています

二週間以上続いているなら、内科でも心療内科でも一度受診してください。孤食が重なるとうつのリスクが上がることが知られています。誰にも会わない日が三日続いたら、外に出る用事を一つ作るところから始めてください。

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この記事を書いた人

シニア向け雑誌の人生相談コーナーの担当として、これまで1000通を超える読者の手紙を読んできました。悩みの多くは、分かってくれる相手が欲しいのだと知りました。定年後の空白、体力の変化、新しい人付き合い。人生後半は終わりではなく仕切り直しの時期です。

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