40代の趣味はひとりでできるものから。続く五つの条件と選び方

四十代半ばで、休日に何をしていいか分からなくなった男性がいる。最初に始めたのは筋トレだった。ジムは一人で完結するし、誰にも気を遣わなくていい。数か月で体が変わり、気分も前を向いた。次に来たのがスパイスカレーで、週末に一人で材料を揃え、じっくり煮込む時間が楽しみになった。友人を誘う必要もなく、自分のペースで没頭できるのが気に入っている。

四十代で趣味が見つからないのは、時間がないからでも、意欲が落ちたからでもない。一人で完結する経験の回数が足りていないだけだ。趣味を先に探すと止まる。一人で行った回数が増えると、趣味のほうが後から見つかる。

目次

40代で趣味が見つからないのは、時間がないからではない

運動習慣がいちばん低いのは30代と40代

厚生労働省の調査で、運動習慣のある人の割合は全体で34.6%、男性38.5%、女性31.5%だった。年齢別に見ると、男女ともに30代と40代で最も低くなる。運動習慣というのは、一回30分以上を週2回以上、一年以上続けている状態を指す。

50代から上がり始めるのは、退職や子育ての一段落で時間が戻ってくるからだ。四十代がへこんでいるのは、その世代がだらしないからではなく、時間の取り合いがいちばん激しい時期に当たっているだけになる。

自分を責めるところから始めると、たいてい二週間で終わる。

予定を合わせるのが億劫になった時期に来る

四十代で一人の趣味を探し始める人には、共通したきっかけがある。人と予定を合わせるのが面倒になった、という感覚だ。

日程を三往復して調整し、直前に誰かの都合が変わり、また調整する。二十代なら苦にならなかった工程が、急に重く感じられる。仕事の調整で一日の体力を使い切っているからだ。

ここで多くの人が、友達が減ったと解釈する。実際に減ったのは友人ではなく、調整に使える余力のほうになる。

探しているのは趣味ではなく、一人でいいという許可

最初は、これでいいのかな、と迷う人が多い。一人で映画に行き、一人でジムに通い、一人で山に入る。その姿を客観視して落ち着かなくなる。

続けていくうちに、これが自分の時間だ、と納得できるようになる。順番が逆だという点が重要になる。納得してから始めるのではなく、始めた後に納得が追いついてくる。

頭の中には、二つのリストがある

一人でもできることと、誰かと一緒でないとできないこと

誰もが二つのリストを持っている。一人でもできることのリストと、誰かと一緒でないとできないことのリストだ。

映画、外食、旅行、遊園地、ライブ、キャンプ。これらがどちらに入っているかは、人によって違う。そして、その振り分けは自分で決めたものではなく、これまでの経験で自動的に決まっている。

四十代の趣味探しは、新しい項目を探す作業ではない。後者のリストから前者へ、項目を移す作業になる。

一本の映画から、六十キロのウォーキングへ

四十三歳のとき、初めて一人で映画館に行った女性がいる。家族と一緒に行くのが当たり前だった人だ。誕生日に有給を取って、近所の映画館に入った。

意外なほど心地よかった。そこから何が起きたか。誰かと一緒でないと諦めていたことが、一気に一人でもできることのリストへ移った。その勢いで、大みそかに六十キロのウォーキングイベントに一人で参加し、達成感を味わっている。

映画一本と六十キロの間には、本来ものすごい距離がある。それが数か月で埋まったのは、彼女の体力が上がったからではない。リストの境界が動いたからだ。一人行動のハードルが下がると、世界が広がる。彼女の言葉がそのまま結論になる。

移すのは、いちばん小さい項目から

いきなり大きいものを移そうとすると失敗する。ソロキャンプや一人旅は、最初の一回目には重い。

移しやすいのは、時間が短く、途中で帰れて、誰とも話さずに済むものになる。平日の夜のカフェ、休日の朝の散歩、一人での映画、美術館、銭湯。二時間以内で終わるものから始める。

一つ移せば、次の一つは軽くなる。ここが効いてくる。

40代で続いた趣味に共通する五つの条件

  1. 人と予定を合わせなくていい。調整の手間がゼロなら、疲れている週でも実行できる
  2. 中断しても再開できる。二か月空けても戻れるものにする。毎日やらないと崩れるものは四十代の生活と噛み合わない
  3. 体力の調整幅がある。今日は三十分、来月は二時間、と自分で強度を決められるもの
  4. 変化が目に見える。体、味、走った距離、撮った枚数。数字か形で残ると続く
  5. 誰にも説明しなくていい。上手さを人に見せる必要がないものほど長持ちする

五つのうち三つ当てはまれば、その趣味は続く見込みがある。

筋トレからスパイスカレーへ移っていった理由

冒頭の男性は、筋トレの次にスパイスカレーへ移った。趣味が変わったように見えるが、五つの条件で見ると同じものを選んでいる。

どちらも一人で完結し、好きなときに中断でき、強度を自分で決められて、結果が体か味に出る。そして、誰にも見せなくていい。表面の活動は違っても、選んでいる性質は一貫している。

自分に合う条件が分かっていれば、飽きたときの乗り換え先も自動的に決まる。飽きたことを失敗として扱わずに済む。

ひとりでできる趣味を、性質で分ける

体を動かすもの

筋トレ、ランニング、サイクリング、ウォーキング、登山、水泳。

毎回一人で走るのは寂しいのではないかと思われがちだが、実際には逆の声が多い。自分のペースで考えごとができて、景色を見る余裕がある。これが心地よいのだという。

四十代は、体力の調整がしやすいものを自然に選ぶようになる。無理をしないほうが続く、と体が先に理解している。

手を動かすもの

スパイスカレー、手料理、お菓子作り、パン、コーヒーの焙煎、写真、プラモデル、刺繍、園芸。

独身生活が長く食事が雑になっていた男性が、健康診断の結果をきっかけに週末の手料理を始めた例がある。簡単なレシピから入って、今では工夫すること自体が楽しみになり、食費も下がった。

外に出るのが負担な時期に、家の中で一人の作業に集中してストレスが抜けたと話す人もいる。手を動かす趣味は、気力が落ちている時期にいちばん強い。

外に出て一人になるもの

ソロキャンプ、釣り、サウナ、御朱印めぐり、美術館、銭湯めぐり。

週末は動画を見て寝るだけだった男性が、ソロキャンプを始めた。森の中で一人、焚き火を眺める。悩みが自然と薄れ、月に一度の心の整備時間になったという。最初は不安もあったが、すべてを自分で判断した経験が自信につながった。

判断を自分だけでする時間は、会社でも家庭でも意外と手に入らない。この種類の趣味が効くのは、そこだと思う。

迷ったら、すでに毎日やっていることを濃くする

何が好きか分からない人ほど、ゼロから探そうとして止まる。

毎日やっていることを一段だけ濃くするほうが早い。コーヒーを飲むなら豆を挽くところから。歩いているなら距離を測る。動画を見るなら同じ作り手を追う。風呂に入るなら近所の銭湯を順に回る。

すでに生活に埋まっている行為は、続ける負担がゼロになっている。そこに濃度を足すだけなら、明日から始められる。

三日坊主にならない設計

曜日と時間を先に決める

空いた時間にやろうとすると、永久に空かない。土曜の朝九時から、木曜の夜八時から、というふうに枠を先に置く。

週一回で足りる。週三回に設定した人から順に脱落する。

道具は二回目に買う

始める前に一式そろえたくなるが、そこで数万円を使うと、続かなかったときの痛みが大きくなる。痛みが大きいほど、次に何かを始めるハードルが上がる。

一回目はレンタルか、手持ちのもので済ませる。二回目に行きたいと思ってから買う。この順番なら、無駄になる確率が大きく下がる。

やめてもいい期間を決めておく

三か月やって合わなければやめる、と先に決めておく。やめる自由がある状態のほうが、人は長く続けられる。

そして、途中で二か月空いても再開していい。空白期間を失敗として数えると、そこで完全に終わる。

家族がいる人の後ろめたさ

自分だけ楽しんでいるように見えないか、という引っかかりを持つ人は多い。特に子どもがまだ小さい家庭で強く出る。

対処としては、時間を隠さないほうがいい。土曜の午前はジムに行く、と先に宣言する。隠して出かけると、家族の側にも説明のつかない不在として残る。宣言しておけば、相手も同じ枠を取りやすくなる。

誰にも説明しなくていい時間を持つと、日常に余裕が戻る。趣味を持った人が口をそろえて言うのは、休日の充実ではなく、平日の機嫌が変わったという話だ。一人で完結する時間は、周りから何かを奪っているのではなく、周りに返すものを作っている。

今週末に二時間、誰とも話さずに済むことを一つやる。趣味が決まるのは、そのあとでいい。

Q. 40代からひとりでできる趣味で、続けやすいものは何ですか

人と予定を合わせなくていい、中断しても再開できる、強度を自分で決められる、変化が目に見える、誰にも説明しなくていい。この五つのうち三つ当てはまるものが続きます。筋トレ、ランニング、料理、写真、ソロキャンプなどが該当します。

Q. お金をかけずに始められる趣味はありますか

散歩やランニング、料理、読書、写真は手持ちのもので始められます。道具は一回目に買わず、二回目に行きたいと思ってから買うと、続かなかったときの出費と落胆を避けられます。

Q. 何が好きか分からないときはどうすればいいですか

ゼロから探さず、すでに毎日やっていることを一段濃くしてください。コーヒーを飲むなら豆を挽くところから始める、歩いているなら距離を測る、風呂が好きなら近所の銭湯を順に回る。生活に埋まっている行為なら、続ける負担がありません。

Q. 一人で映画やカフェに行くのが恥ずかしいのですが

最初の一回が最も重く、二回目以降は急に軽くなります。四十三歳で初めて一人で映画館に行った人が、その後に六十キロのウォーキングイベントへ一人で参加した例もあります。二時間以内で終わり、途中で帰れるものから移していくと進みやすくなります。

Q. 40代は時間がなくて趣味どころではありません

運動習慣のある人の割合は男女ともに30代と40代で最も低く、50代から上がります。時間の取り合いが最も激しい年代なので、意欲の問題ではありません。週一回、曜日と時間を先に決めて枠を確保する形にすると実行できます。

Q. 三日坊主を繰り返してしまいます

空いた時間にやろうとすると永久に空かないため、曜日と時間を先に決めてください。頻度は週一回で足ります。三か月やって合わなければやめると先に決めておくと、やめる自由がある状態のほうが結果的に長く続きます。

Q. 家族がいると自分だけ楽しむことに罪悪感があります

時間を隠さず、土曜の午前は出かけると先に宣言してください。隠して出かけると家族には説明のつかない不在として残りますが、宣言しておけば相手も同じように自分の枠を取りやすくなります。

Q. 一人でできる趣味ばかりだと孤立しませんか

一人で完結する趣味を持った人が口にするのは、休日の充実より平日の機嫌が変わったという変化です。人と会う量ではなく、誰にも説明しなくていい時間があるかどうかが効いています。

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この記事を書いた人

シニア向け雑誌の人生相談コーナーの担当として、これまで1000通を超える読者の手紙を読んできました。悩みの多くは、分かってくれる相手が欲しいのだと知りました。定年後の空白、体力の変化、新しい人付き合い。人生後半は終わりではなく仕切り直しの時期です。

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