婚活する60代男性の現実。相談所とアプリのどちらがいいのか

62歳の元会社員は、50代で離婚してしばらく一人で暮らしていた。がんの闘病を経て、このまま一人で老後を迎えるのは心細いと感じ、結婚相談所に入会した。

最初の3か月で10人の女性と会い、すべて実らなかった。初対面で、持ち家ですか、仕事は何歳まで続けますか、持病の再発の可能性はどうですかと立て続けに聞かれる。財政調査のような会話に気後れした。3回会うと真剣交際の意思表示を求められ、そのスピードについていけず、本気じゃないと見られて断られた。

あの質問は、値踏みではない。相手は、自分がこの先背負うことになる荷物を数えている。この違いが分かると、答え方が変わる。

目次

60代男性の婚活で、最初に起きること

初対面で財政調査のような質問が来る

持ち家か賃貸か。年金はいくらか。いつまで働くのか。病歴と、その再発の可能性。

若い頃の恋愛で、初対面にこの種の質問は出てこない。だから多くの男性が、金目当てなのかと身構える。相談所に費用を払っている側としては、こちらが審査されている構図にも見える。

この場面で不機嫌になるか、正直に答えるかで、その後がほぼ決まる。

3回会うと意思表示を求められる

もう一つ驚かれるのが、進行の速さになる。相談所には仮交際から真剣交際へ進む段階があり、3回ほど会った時点で意思をはっきりさせるよう促されることが多い。並行して複数と会う運用なので、判断を先延ばしにすると相手が別の人に決まる。

62歳の男性が本気じゃないと見られたのは、性格の問題ではなく、この運用を知らなかったからだ。じっくり人柄を見てから、という進め方が、この場では消極性として翻訳される。

入会前に、担当者へ交際の進め方と期限を確認しておく。それだけで避けられる誤解になる。

アプリでは、返信が来ないところで止まる

61歳の会社員はシニア向けのアプリに登録した。40代の女性はほとんどおらず、マッチングしてもやり取りが続かない。会えたのは同世代か少し下の女性で、写真どおりの印象だったという。ただ、相手が求めていたのは恋愛より穏やかな交流で、友達になるイメージが大事だと感じたそうだ。

別の62歳の男性は、マッチング自体が少なく、返信もなかなか来ないと話している。

アプリは費用が安い代わりに、この年代の男性は数の中に埋もれる。無料で試す価値はあるが、そこで結果が出ないことを自分の評価として受け取る必要はない。

あの質問は、値踏みではない

相手が数えているのは、自分が背負う荷物

50代後半から60代の女性にとって、再婚は自分の老後の設計に他人を入れる決断になる。子どもが独立し、年金の見込みが立ち、この先どう暮らすかが見えかけた時期だ。

そこへ入ってくる相手が、数年後に介護が必要になったらどうなるか。自分が最初の看取り役になるのか。家は誰のものになり、自分は住み続けられるのか。

質問の中身はお金と健康の話に見える。実際に測っているのは、共倒れの確率になる。

62歳の男性は最終的に、仕事の取材で知り合った同世代の女性と半年で事実婚のような形に落ち着いた。相手は自立していて、財産や介護を当てにしない姿勢だった。それが安心につながったという。彼が相手に感じた安心は、質問してきた女性たちが探していたものと、まったく同じ性質のものになる。

だから、隠すほど不利になる

隠して交際が進めば、相手は後から知ることになる。そのとき相手が受け取るのは、病気があったという事実ではなく、この人は不利なことを言わずに進めたという印象だ。

一度その印象がつくと、他に隠していることがあるのではないかという疑いが残る。老後を預ける相手を選ぶ場面で、この疑いは決定的になる。

先に出せば、受け入れられない人は最初から来ない。来る人数は減るが、会ってから終わる回数も減る。

介護と持病を先に出して成婚した人

地方に住む65歳の男性は、母親と同居しながら年金で暮らしていた。介護を一人で抱え、夕方までに帰宅しなければならない生活の中で婚活を始めている。過去に別の相談所でうまくいかなかった経験もあった。

彼がやったのは、隠すことではなく整えることだった。古くて片づいていなかった家を断捨離し、簡単なリフォームを入れた。行政の介護サービスを使い始め、自分一人で抱える形をやめた。そのうえで、母の介護と両立するための工夫を、相手に事前に相談している。

59歳の会社員の女性と成婚した。介護があることではなく、介護をどう処理する設計になっているかを見せたことが、相手の安心につながった。

数字で見る、60代男性の現実

会員は男性が多く、女性が少ない

結婚相談所では、20代と30代は女性が多く、40代でほぼ半々になり、50代後半から男性が上回る。60歳を超えると会員数そのものが減るため、紹介できる人数も少なくなる。

これが厳しさの正体になる。魅力の問題ではなく、分母の問題だ。

一方で、50代から60代の独身者のうち半数近くが、結婚か交際相手を望んでいるという調査もある。動いていない人が多いだけで、需要そのものは存在している。

成婚しているのは年齢差5歳以内

ある相談所の実績では、50代後半から70代で成婚したカップルは、年齢差が5歳以内で、男性のほうが年上という組み合わせが中心だった。10歳以上離れたカップルもいるが、全体としては多くない。

希望する年齢を5歳下までに置くと、会える人数が跳ね上がる。10歳下を希望すると、その層の女性は同年代の男性とも競合するため、申し込みが通りにくくなる。

期間と費用の目安

  • 45歳以上を専門とする相談所では、60代の成婚率が26.7%、平均の活動期間は9.8か月という数字が出ている
  • 別の大手では、60代に限った成婚率を31.2%としている
  • 費用は、成婚料のない形で1年およそ27万円、成婚料を含む形で1年およそ75万円という水準になる
  • 数字の定義は各社で異なるので、真剣交際に進んだ時点を成婚と数えるのか、婚約後を数えるのかを入会前に確認する

一年近くかかる前提で予算を組む。三か月で結果が出ないことを、失敗として扱わない。

うまくいかない人に共通していること

家事要員を探しているように見える

母親が施設に入ったことをきっかけに、身の回りの世話をしてくれる人が欲しいと考えて婚活を始める人がいる。動機としては自然だが、その言い方をすると、家事要員を探していると受け取られる。

同じ内容でも、家事を分担したい、一緒に食事をする相手がほしい、と言えば意味が変わる。何を求めているかではなく、相手に何を渡すつもりかを先に言う。

若い女性を希望する

60代で40代を希望する男性は一定数いる。この希望自体を責める話ではないが、成婚のデータは年齢差5歳以内に集まっている。

希望と結果がここまで離れていると、周囲からは自分を客観視できていないように見える。そして担当者も紹介しにくくなる。実際に会える人数が減るという意味で、この希望は費用に直結する。

資産はあっても、生活能力が伴わない

持ち家があり、年金も十分にある。それでも関係が深まらない人がいる。

料理をしたことがない、洗濯機の使い方を知らない、部屋が片づいていない。相手はそこに、自分が身の回りを全部やることになる未来を見る。資産の話を先に出すほど、その未来が現実味を帯びる。

結果が出た人がやっていたこと

まず会って人柄を知る

63歳の男性は死別を経験し、定年を機に婚活を始めた。恋愛経験が豊富だったわけではない。大切にしたのは、まず会って人柄を知るという姿勢だけだった。

数人とお見合いをして、58歳の女性と3か月で成婚している。相手も似た境遇だったため、過去の話を無理に隠さず共有できたことが大きかったという。今は日常の小さな気遣いを積み重ね、旅行を一緒に楽しむ関係を築いている。

条件で絞り込む前に会う。この順番のほうが、この年代では速い。

家と身の回りを整える

  • 部屋を片づけ、来客が座れる状態にする
  • 服を数着買い替える。年齢を隠す方向ではなく、清潔さの方向で選ぶ
  • 歯科と皮膚科に一度行っておく
  • 料理を三品でいいので作れるようにする
  • 親の介護がある場合、行政のサービスを先に入れて、自分の時間を確保する

先の65歳の男性がやったのは、この一覧とほぼ同じことになる。相手が見ているのは資産ではなく、生活が回っているかどうかだ。

場所を変える

入会直後から女性側から複数の申し込みが入り、数週間でお見合いが決まった男性がいる。以前の大手相談所では縁がなかったのに、環境を変えたら勢いがついた。評価されたのは、素直さ、清潔感、積極的に会いに行く姿勢だった。

同じ人物でも、会員層と担当者が変われば結果が変わる。半年動いて手応えがないなら、自分を直す前に場所を疑ってみる価値がある。

続けるか、やめるか

半分以上諦めたと言った人

名古屋に住む60代半ばの男性は、10年ほど前に母を亡くして一人になり、活動を再開した。数人と出会ったが関係が続かない。エネルギーや生活リズムのすれ違いを感じたという。

若い頃のような情熱を注げない自分と、相手のペースが合わない。結局、積極的に探すのをやめ、半分以上諦めたと語っている。気ままな一人の生活も悪くないと感じるようになったそうだ。

これは失敗ではない。何十年も自分のリズムで暮らしてきた人が、他人と歩調を合わせる工程に負担を感じるのは自然なことになる。撤退を決めた人も、決めた分だけ気持ちが軽くなっている。

事実婚という着地もある

冒頭の62歳の男性は、籍を入れずに一緒に暮らす形を選んだ。相手が自立していて、財産も介護も当てにしない姿勢だったことが決め手だった。

籍を入れなければ相続権は発生しない。子どもとの摩擦は起きにくい代わりに、相手に財産を残したいなら公正証書での遺言が必要になる。医療の同意を誰がするかも、先に決めておく。

何を持っているかではなく、どう向き合うか。60代の婚活で結果を分けているのは、そこになる。病気も、介護も、年金の額も、隠さずに出して、それをどう処理するつもりかまで示す。値踏みされていると感じた場面は、実は説明の機会になっている。

Q. 60代男性の婚活はどのくらい厳しいですか

結婚相談所では50代後半から男性会員が女性を上回り、60歳を超えると会員数自体が減るため紹介できる人数も少なくなります。一方で45歳以上を専門とする相談所では60代の成婚率が26.7%、平均活動期間は9.8か月という数字が出ています。一年近くかかる前提で計画してください。

Q. 初対面で持ち家や持病を聞かれるのはなぜですか

相手が値踏みしているのではなく、自分が背負う荷物を数えているためです。50代後半から60代の女性にとって再婚は自分の老後の設計に他人を入れる決断で、途中で介護を担う側になる確率を測っています。不機嫌にならず正直に答えたほうが結果は良くなります。

Q. 持病や闘病歴は伝えるべきですか

先に伝えてください。隠して交際が進むと、相手が受け取るのは病気の事実ではなく、不利なことを言わずに進めたという印象になります。老後を預ける相手を選ぶ場面で、その疑いは決定的に働きます。

Q. 親の介護をしていても婚活はできますか

できます。母親の介護をしながら59歳の女性と成婚した男性がいます。決め手は介護があることを隠さず、行政のサービスを入れて自分一人で抱えない形にしたうえで、両立の工夫を事前に相談したことでした。

Q. 相手の年齢はどのあたりを希望すべきですか

年齢差5歳以内が現実的です。ある相談所の実績では、50代後半から70代で成婚したカップルは年齢差5歳以内で男性が年上という組み合わせが中心でした。10歳下を希望するとその層は同年代の男性とも競合するため、会える人数が大きく減ります。

Q. 結婚相談所とマッチングアプリはどちらがいいですか

相談所のほうが機能します。シニア向けアプリに登録しても40代の女性はほとんどおらず、マッチングしても返信が続かないという声が多くあります。アプリは無料で試す価値がありますが、結果が出ないことを自分の評価として受け取る必要はありません。

Q. 3回会っただけで交際の意思を求められるのはなぜですか

相談所には仮交際から真剣交際へ進む段階があり、3回ほどで意思を明確にする運用が一般的だからです。並行して複数と会うため、判断を先延ばしにすると本気ではないと受け取られます。入会前に進め方と期限を担当者に確認しておいてください。

Q. 半年活動して手応えがない場合どうすればいいですか

自分を直す前に場所を疑ってください。大手で縁がなかった人が相談所を変えた途端、数週間でお見合いが決まった例があります。会員層と担当者が変われば同じ人物でも結果が変わります。

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この記事を書いた人

シニア向け雑誌の人生相談コーナーの担当として、これまで1000通を超える読者の手紙を読んできました。悩みの多くは、分かってくれる相手が欲しいのだと知りました。定年後の空白、体力の変化、新しい人付き合い。人生後半は終わりではなく仕切り直しの時期です。

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