45歳のシングルマザーが、前の夫と別れて十年、息子を一人で育て上げた後に出会いを探し始めた。登録したときの気持ちは、もう男性に相手にされるわけない、だった。
予想は外れた。すぐに興味を示す男性が何人も現れ、女性として見てもらえる喜びに乙女心が蘇ったという。
動く前に自分で立てた予測は、たいてい外れる。ただし外れ方には二つの方向がある。思ったより関心を持たれるのと、思ったより雑に扱われるのが、同じ場所で同時に起きる。片方だけを想定して入ると、必ずどこかで折れる。
動く前の予測は、たいてい外れる
もう無理だろうと思っていた人に起きたこと
登録前の自己評価は、この年代でほぼ全員が低く見積もっている。誰にも試していないので、当然のことになる。
十年ぶりに動いた45歳の女性は、その予測が数日で崩れた。娘に勧められて街コンに行った52歳の女性は、重い腰を上げて参加している。死別後にアプリを使った68歳の女性は、孫がいる立場だった。どの人も、動く前は無理だと思っていた。
年齢と、誰かに関心を持たれるかどうかは、思っているほど連動していない。
外れ方には、二つの方向がある
同時に、逆方向にも外れる。
40代後半の女性がアプリで受け取ったのは、おばさんの来るところじゃない、二万円くれたら会ってあげてもいい、起業したいから百万円出してほしい、といったメッセージだった。からかいのような内容ばかりで、国際的な詐欺と思われるものもあった。登録した直後から心が折れかけたという。
想定より歓迎されることと、想定より雑に扱われることが、同じアプリの同じ受信箱に並ぶ。
同じ週に、両方が来る
だから、この年代の出会いは気分が上下しやすい。朝に届いた丁寧なメッセージで浮上し、夜に届いた一行で沈む。
先に知っておけば、揺れ幅が小さくなる。歓迎も暴言も、自分の価値を測った結果ではなく、送ってきた人の質がそのまま出ているだけになる。
実際に届く言葉と、その正体
おばさんの来るところじゃない
この一行を受け取ったとき、多くの人が自分の側を疑う。写真が悪かったか、年齢を書いたのが失敗だったか、と。
そうではない。初対面の相手に、頼まれてもいない評価を送りつける行為は、送った人の問題になる。相手を傷つけることが目的で、そこに情報はない。
同じアプリの中で、丁寧な文章を書く男性も同じだけ存在している。届いた一通を全体の代表として扱わないことが、続けるための最初の技術になる。
二万円くれたら会ってもいい、百万円出して
金銭を要求してくる相手は、恋愛の相手ではなく別の目的で来ている。額の大小は関係ない。
会う条件として金を求める。事業や投資の資金を求める。急な医療費や渡航費を求める。名目は変わっても、要求が出た時点で相手の目的ははっきりしている。
返さなくていい。通報していい
失礼なメッセージに返信する義務はない。説明も、断りの一文も要らない。
- ブロックと通報を、その場で済ませる
- 通報するとアプリの運営側に記録が残り、悪質な利用者の排除につながる
- スクリーンショットを一枚だけ残す。相手が別アカウントで来たときの照合に使える
- 読み返さない。手元に残すほど自分が削られる
いちばん危ないのは、優しい相手のほう
40代と50代の女性が、女性被害者の6割近く
暴言より危ないのは、丁寧で優しい相手になる。
警察庁の集計で、2025年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数が1万5168件、被害額が1834.3億円だった。前年から件数で約48%、被害額で約44%増えている。ロマンス詐欺の一件あたりの平均被害額は約1000万円になる。
被害者の内訳を見ると、女性は40代と50代を合わせて57.5%を占める。きっかけになったツールはマッチングアプリが最も多く、全体の三割前後。接触の手段はダイレクトメッセージが約九割になる。
この記事を読んでいる年代が、そのまま狙われている層と重なっている。
見分ける四つの線
- 一度も対面していない。ビデオ通話も避け、仕事や通信環境を理由に引き延ばす
- 好意の進み方が速い。数日で特別な言葉が出て、毎日長時間の連絡が続く
- 職業の説明が確かめにくい。海外勤務、軍関係、医師、実業家、暗号資産の運用
- 金銭の話が出る。投資、送金、手数料、税金、緊急の医療費
四つ目が出た時点で、それ以前の三つの有無に関係なく手を止める。要求される名目は暗号資産の投資が最も多い。
送る前に、必ず誰かに話す
被害に遭った人は、特別に軽率だったわけではない。数か月かけて信頼関係を作られているので、疑うほうが不自然に感じる段階まで進んでいる。
だから、自分の判断力に頼らない仕組みを先に作っておく。一円でも送る前に、誰か一人に話す。家族に言いにくければ、警察相談専用電話の9110で事情を相談できる。すでに送ってしまった場合も、早いほど口座が凍結できる可能性が残る。
現実の場で会い、顔を合わせて時間を重ねている相手なら、この心配はほぼ要らない。危ないのは、画面の中だけで完結している関係になる。
若く見せることと、年齢を偽ることは別
写真を変えて自信が戻った55歳
55歳の女性は、写真を若く見えるものに選び直した。たくさんのいいねが届き、以前に接客の場でおばちゃん扱いされて落ちていた自信が戻った。45歳で年収の高い男性と会い、そこから関係を深めていったという。
写真を丁寧に撮り直すこと、明るい場所を選ぶこと、姿勢を整えること。これは身だしなみの範囲になる。
年齢を隠して、明かした日に去られた人
一方で、年齢を隠していた女性がいる。実年齢を明かした途端、おばさんじゃん、と言われて去られた。ショックで、人の目を見て話せなくなったという。
同じ工夫に見えて、結果が正反対になった。
差はどこにあったか
前者が変えたのは見せ方で、後者が変えたのは情報だった。
若く見えるように整えるのは、実物をよく見せる行為になる。会えば実物が来るので、落差は小さい。年齢を偽るのは、事実そのものを書き換える行為で、必ず明かす日が来る。そしてその日に返ってくる言葉が、いちばん深く刺さる。
年齢は正直に書く。そのうえで、写真と文章に手をかける。この順番なら、届く数が減っても、会ってから終わる回数が減る。
相手が実際に見ているところ
会話が一方通行になっていないか
お見合いで断られた人の中に、会話が卓球のように一方的で、相手を論破するような話し方をしていた例がある。
長く一人でやってきた人ほど、話が説明の形になりやすい。仕事で人に指示してきた人なら、なおさら出る。相手の発言に反応するより、自分の見解を返してしまう。
一往復ごとに、質問を一つ返す。それだけで印象が変わる。
生活が自分で回っているか
実家暮らしで家事を親に任せている、収入をすべて自分磨きに使って貯金がない。こうした点は、男性側から敬遠されやすい現実がある。
年齢や見た目の話ではない。一緒に暮らしたときに、生活が二人分回るかどうかを見られている。ここは今からでも動かせる部分になる。
条件から入ると落差が出る
40代の女性が、医師で高年収というプロフィールに惹かれて会いに行った。実際に会うと別人のようで、そのまま音信不通になった。
この年代で条件から入ると、会った瞬間に落差が出る。条件は確定した過去で、これからの変数は一緒にいる時間の心地よさだけになる。順番を変えるだけで、無駄足が減る。
なお、既婚者からの誘いは別の問題になる。単身赴任中の妻帯者と関係を持った例が実際にあるが、配偶者以外との肉体関係は不貞行為とされ、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性がある。寂しさとは切り離して判断する部分になる。
前に進んだ人たちがしていたこと
軽い気持ちで参加した二回目
52歳の女性は、娘に街コンに行ってみたらと勧められて参加した。一回目は印象に残る人がいなかった。二回目で、以前に付き合っていた男性と再会する。
誠実な人柄と金銭感覚が合い、交際に発展して結婚まで至った。恋愛にうんざりしていた時期に、軽い気持ちで行ったことが転機になっている。
一回目で判断しない。この年代の出会いは、回数がそのまま確率になる。
三か月で十回会う
失恋をきっかけに登録した50代の女性は、結婚を急がない相手が多く話しやすかったという。三か月で十回ほどデートを重ね、落ち着いた相手を見つけた。
十回という数字が要点になる。一人か二人で判定すると、たまたま合わなかっただけの結果を自分の評価にしてしまう。
孫がいても恋していい
死別後にアプリで出会い、周囲の目を気にせず再婚した68歳の女性がいる。孫がいる立場だった。
子どもたちは、お母さんが輝いていると言って理解してくれたという。反対されると思って言い出せない人が多いが、実際の子ども世代は、親が一人で沈んでいく姿のほうを心配していることが多い。
もう相手にされないという予測は、誰にも確かめられていない。確かめた人だけが、その予測の外れ方を知る。
Q. 40代50代の女性でも出会いはありますか
あります。もう相手にされないと思って登録した45歳の女性に何人もの反応が届いた例や、68歳で死別後に再婚した例があります。ただし歓迎される場面と雑に扱われる場面が同じ場所で同時に起きるため、両方を想定して入ってください。
Q. 失礼なメッセージが来たらどうすればいいですか
返信せず、その場でブロックと通報をしてください。頼まれてもいない評価を送りつける行為は送った側の問題で、そこに自分についての情報はありません。スクリーンショットを一枚だけ残しておくと、別アカウントで来たときの照合に使えます。
Q. ロマンス詐欺はどう見分ければいいですか
一度も対面していない、好意の進み方が速い、職業が確かめにくい、金銭の話が出る。この四つのどれかに当てはまるときは手を止めてください。2025年のSNS型投資・ロマンス詐欺は認知件数1万5168件、被害額1834.3億円で、女性被害者の57.5%を40代と50代が占めています。
Q. お金を送ってしまいそうなときはどうすればいいですか
一円でも送る前に、必ず誰か一人に話してください。家族に言いにくければ警察相談専用電話の9110で相談できます。すでに送った場合も、早いほど口座の凍結が間に合う可能性が残ります。
Q. 年齢は正直に書くべきですか
正直に書いてください。写真を明るく撮り直して自信を取り戻した人がいる一方、年齢を隠していて明かした日に去られ、人の目を見て話せなくなった人もいます。見せ方を整えるのは身だしなみですが、年齢を偽るのは必ず明かす日が来る情報の書き換えになります。
Q. 男性から敬遠されるのはどんな点ですか
会話が一方通行になっていること、生活が自分で回っていないことが挙がります。相手の発言に反応せず自分の見解ばかり返す、家事を人任せにしている、収入をすべて自分に使って貯えがない。年齢ではなく、一緒に暮らしたときの姿を見られています。
Q. 何回くらい試せば結果が出ますか
街コンの二回目で再会した相手と結婚に至った人、三か月で十回ほど会って落ち着いた相手を見つけた人がいます。一人か二人で判定すると、たまたま合わなかった結果を自分の評価にしてしまいます。

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