老いらくの恋は何歳から?50代から70代の実例

占いで老いらくの恋があると言われて、まず気になったのは自分がその年齢なのかどうかだった。50代の女性がそう話していた。老いらくとは何歳からを言うのか。聞き返したくなるほど、自分ではまだその段階にいるつもりがない。

答えを先に置くと、老いらくの恋に年齢の定義はない。辞書にも法律にも数字の線は引かれていない。呼ばれる側の年齢は、実際には50代から70代まで大きく散らばっている。

散らばる理由もはっきりしている。この言葉が測っているのは年齢ではなく、その人の周囲が持つ驚きの量だからだ。同じ60歳の恋でも、周りが当然のこととして受け取る家庭では老いらくの恋とは呼ばれず、意外だと受け取る家庭では呼ばれる。

呼ばれ方の目安を並べると、こうなる。

  • 50代 本人はまだ早いと感じ、他人から言われて戸惑う年代
  • 60代 死別や離別のあとの出会いで、周囲が使い始める年代
  • 70代以上 本人も笑いながら使うようになる年代
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老いらくの恋に年齢の定義はない

辞書にも法律にも年齢の線引きはない

老いらくの恋を何歳以上と定めた基準は存在しない。高齢者の定義であれば、法律や制度の中に65歳や75歳という数字があるが、恋愛にその線を持ち込む決まりはどこにもない。

だから使う人の感覚で年齢が上下する。占いで50代の女性に向けて使われることもあれば、80代の再婚に対して使われることもある。数字を探しても見つからないのは、探す場所がないからだ。

実際に呼ばれる年齢は50代から70代まで幅がある

先の50代の女性が周囲を見渡すと、60代や70代で新しい相手と出会って再婚する人がいる一方、50代前半で、もう歳だからと諦めてしまう人もいる。何歳になっても恋をするのだな、と羨ましく思う瞬間があるという。

同じ年齢でも、諦める人と踏み出す人がいる。分かれ目は体力でも見た目でもなく、自分にまだその資格があると思えるかどうかにある。老いらくという言葉が厄介なのは、その資格を先回りして取り上げてしまう響きを持っている点だ。

言葉の由来をたどると、意味が変わる

老いらくは老いが来ることを指す古い言葉

老いらくは、老いるという動詞から生まれた古い名詞で、老いが来ること、老年そのものを指す。古今和歌集にも、老いらくが来ると分かっていたら門を閉ざして会わずにいたのに、という趣旨の歌が残っている。老いを訪問者に見立てた表現だ。

もともとは恋とは無関係の言葉だった。年を取ることを指すだけの、静かな語だった。

世に広めたのは67歳の歌人の恋だった

この言葉が恋と結びついたのは、昭和のある出来事による。歌人の川田順が67歳で年下の女性と恋に落ち、自らの歌の中で、老いらくの恋は怖るる何ものもなしと詠んだ。この恋は当時大きく報じられ、老いらくの恋という言い方が一般に広まった。

つまり語源をたどると、この言葉を最初に使ったのは当事者本人だ。外野が笑うために作った言葉ではなく、恐れるものは何もない、と自分の恋を肯定するために詠まれた一句から始まっている。

揶揄する響きは後から付いたもの

いまの用法には、いい歳をして、という含みがついて回る。ある40代の男性は、父親の死後に母親が新しい相手と交際し始めたとき、いい歳して色恋にうつつを抜かすな、と感じた。母親自身も、老いらくの恋なんてみっともない、と周囲に気を使っていたという。

本人が先回りして恥じてしまうところに、この言葉の後から付いた棘が出ている。語源に立ち返れば、恐れるものは何もないと詠んだ側の言葉だった。もし誰かに言われて傷ついているなら、元の意味の方が正しいと思っていい。

当事者が語る、若い頃の恋との違い

独占欲より、一緒にいる時間そのものを見る

妻を亡くした60代の男性は、近所の同世代の女性と親しくなった。最初は挨拶を交わす程度だったが、共通の趣味の話をするうちに距離が縮まった。若い頃のような劇的な感情ではない。穏やかな安心感と、一緒にいたいという気持ちが確かにあった。

友人からはこう言われたそうだ。その歳で一瞬でも心が輝いたのなら素晴らしい、元は取れている。

元は取れている、という言い方が的を射ている。若い恋は未来の長さを前提にするが、この年代の恋は、いまこの時間が良いかどうかで完結する。

相手の健康と家族の事情を考える余裕がある

70代の女性は、シニアマンションに入居してから同じフロアの男性と親しくなった。老いらくの恋はなにしろ勢いがある、と笑うが、若い頃とは決定的に違う点があるという。相手の健康状態や、その人の家族の事情を考える余裕があることだ。

自分の気持ちだけで押し切らない。相手の通院の予定、子どもとの関係、体力の限界。それを織り込んだ上で会う頻度を決める。若い恋にはない配慮が、はじめから組み込まれている。

結婚まで進めなくてもいいという選択

同じ女性は、無理に結婚まで進めなくてもいいとも話していた。一緒に食事をし、散歩をする時間があるだけで十分だという。周りの入居者たちにも、そうした関係を温かく見守る空気があるらしい。

籍を入れなければ本気ではない、という考え方は、この年代では合理性を失う。相続、子どもとの関係、介護の負担。籍を入れることで発生する問題を避けながら、関係だけを続ける形が選ばれている。

周りに話しても笑われる、という壁

当事者だけが特別に感じてしまう理由

50代後半の女性は、長年の友人からこの歳で本当の気持ちを知ってしまった、と打ち明けられた。ただ、その話を周りにすると、たいてい笑われて終わる。本人だけが貴重な経験だと感じている。彼女は冷静にこう見ていた。疲れているだけかもしれないのに、老いらくの恋に陥りがちなのだ、と。

珍しいことではないのに、当事者になると特別に思える。この落差が、話しても伝わらない原因になっている。長く感情が動かない時期が続いたあとの高揚は、実際の関係の深さ以上に大きく感じられる。だからこそ、周囲の反応の薄さがこたえる。

伝わらないことを前提にすると気が楽になる。相談相手は、同年代で似た経験をした人か、利害のない第三者に絞る方がいい。

子ども世代が複雑になるのは財産と親のイメージ

子どもが反対する理由は、たいてい二つに集約される。亡くなった親、あるいは自分が知っている親のイメージが崩れることと、財産が外に流れる懸念だ。恋愛そのものへの反対に見えて、中身は別のところにある。

先の40代の男性は、最終的にこう言って認めた。殺さなきゃいいんだよ、結婚でも再婚でも好きにしろ。乱暴な言い方だが、子ども側の落としどころとしては現実的だ。感情の面では折り合わないまま、生活の自由は認める。この形で収まる家庭は多い。

現実に起きていること。同世代か、若い相手か

期待と現実の差も知っておいた方がいい。独身の高齢男性が若い女性に目を向けがちで、同世代同士の恋愛は成立しにくいという声がある。年配の女性の独身はもてはやされにくく、年配の男性も若い相手からは選ばれにくい。双方が自分より若い相手を望むと、誰とも噛み合わない。

実際に続いているのは、同年代で支え合う関係の方だ。先の60代の男性も70代の女性も、相手は同世代だった。共通の話題があり、体力のペースが近く、抱えている事情が似ている。長く続く条件がそろっている。

映画やドラマで描かれる偏屈な老人の恋を観て感動したという人は、好きな人を前に悪戦苦闘する姿と、それを見守る周囲の温かさに年齢は関係ないと感じたそうだ。何歳になっても恋はいい、それが愛だ、と。物語の中では祝福される関係が、現実では笑われる。その差を埋めるのは、当事者が堂々としていることしかない。

気持ちが動いたときに、順番に決めること

動くと決めたなら、決める順番がある。

まず、関係の形を先に決める。籍を入れるのか、入れずに付き合うのか、同居するのか別々に住んで通うのか。この四通りのどれを望むかを自分の中で固めてから、相手に伝える。順番が逆になると、周囲の反対に押されて形だけが決まっていく。

次に、子どもへの伝え方だ。交際が始まってすぐではなく、続く見込みが立った段階で、自分の口から直接伝える。人づてに知られると、隠されたという印象が先に立つ。伝える内容は感情ではなく、生活がどう変わるかに絞る。住まいをどうするか、財産をどう扱うつもりか。ここを最初に示すと、反対の芯が抜ける。

再婚を選ぶなら、財産の扱いを書面にしておく。配偶者になると相続の権利が発生し、子どもの取り分が変わる。公正証書で遺言を残しておけば、後の争いはかなり減る。籍を入れない選択をした場合は、相手に財産は渡らないので、どうしても残したいものがあるなら別の手当てが要る。

最後に、健康のこと。相手が倒れたときに誰が対応するのか、病院からの連絡先に誰の名前を書くのか。籍を入れていない関係では、面会や病状の説明で立場を問われる場面がある。元気なうちに、互いの子どもに連絡先を渡しておくだけで違う。

死別した相手への後ろめたさが消えないという人も多い。ただ、先に逝った側が、残った人に一人で過ごしてほしいと願うかどうかは、考えてみればわかる。手相を見る仕事をしている人が言っていた。終わりを示すように見える線が、実は新しい始まりの線かもしれない。何歳であっても、好きだと思う感情を持てること自体が、もう十分に幸せなことだと。

老いらくの恋は何歳からを指しますか

年齢の定義はありません。辞書にも法律にも基準はなく、実際には50代から70代まで幅広い年代に対して使われています。呼ばれるかどうかは年齢ではなく、周囲がその恋をどれだけ意外に感じるかで決まります。

老いらくの恋の意味と語源は何ですか

老いらくは老いが来ることを指す古い言葉で、古今和歌集にも老いを訪問者に見立てた歌が残っています。恋と結びついたのは昭和になってからで、歌人の川田順が67歳で年下の女性と恋に落ち、恐れるものは何もないという趣旨の歌を詠んだことで広まりました。もともとは当事者が自分の恋を肯定するために使った言葉です。

老いらくの恋は失礼な言葉ですか

現在の使われ方には、いい歳をして、という揶揄の含みが伴うため、本人に向けて使うと傷つける可能性があります。語源にさかのぼれば当事者が自分の恋を肯定した言葉なので、自分で使う分には問題ありません。他人の恋愛を指して使う場合は、シニアの恋愛といった言い方に置き換える方が無難です。

高齢での恋愛は、若い頃と何が違いますか

独占欲や将来の長さを前提にせず、いま一緒にいる時間そのものを評価する点が違います。相手の健康状態や家族の事情を考慮する余裕があり、会う頻度もそれを織り込んで決められます。結婚まで進めず、食事や散歩を共にする関係で満足する選択も広く取られています。

子どもに交際を反対されたらどうすればいいですか

反対の理由は、親のイメージが崩れることと財産が外に流れる懸念のどちらかに集約されます。感情面を説得しようとせず、住まいをどうするか、財産をどう扱うつもりかを先に示すと反対の芯が抜けます。交際が続く見込みが立った段階で、人づてではなく自分の口から直接伝えてください。

高齢で再婚すると相続はどうなりますか

籍を入れると配偶者に相続の権利が発生し、子どもの取り分が変わります。争いを避けるには、公正証書で遺言を残しておく方法が有効です。籍を入れない場合は相手に財産は渡らないため、残したいものがあるなら生前贈与など別の手当てが必要になります。

死別した配偶者への罪悪感とどう向き合えばいいですか

新しい相手を持つことが、亡くなった人との時間を否定することにはなりません。先に逝った側が残された人に一人で過ごすことを望むかどうかを考えると、答えは出やすくなります。罪悪感が強い時期は無理に結論を出さず、関係を進める速度を落とすだけで十分です。

同世代と年下、現実にはどちらと付き合う人が多いですか

長く続いているのは同世代同士の関係です。共通の話題があり、体力のペースが近く、抱えている事情が似ているため、無理なく続きます。互いに自分より若い相手を望むと成立しにくくなるという指摘も、当事者の間からは出ています。

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この記事を書いた人

シニア向け雑誌の人生相談コーナーの担当として、これまで1000通を超える読者の手紙を読んできました。悩みの多くは、分かってくれる相手が欲しいのだと知りました。定年後の空白、体力の変化、新しい人付き合い。人生後半は終わりではなく仕切り直しの時期です。

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