高齢者マークを付けないと減点されると思っていた。調べてみたら、付けなくても点数はつかないと分かって拍子抜けした。そう話す人が多い。
一方で、マークを付けた車に幅寄せや割り込みをすると点数が科される、という規定を知らない人も多い。こんな違反があったのか、と今回初めて知ったという声が出る。
この二つは、まったく別の話になる。
- マークを付けない運転者に、違反点数と反則金はない
- マークを付けた車に幅寄せや割り込みをした運転者に、違反点数1点と反則金が科される
点数が向いているのは、周囲の側だ。付ける側ではない。ここを取り違えると、家族の説得も、自分の運転の点検も、方向がずれる。
点数がつくのは、付けない側ではない
付けなくても違反点数はゼロ
高齢運転者標識の表示は、70歳以上の運転者への努力義務になる。70歳から74歳までは、加齢による身体機能の低下が運転に影響を及ぼすおそれがあるときという条件つきで、75歳以上は条件を問わず対象になる。
ただし、どちらの年齢でも、表示していないことへの罰則や違反点数はない。表示するかどうかは運転者本人の判断に委ねられている。
70歳を超えた母親が今まで付けていなかったが、努力義務だと知って安心した、という声があった。制度としては、その理解で正確になる。
妨害した側に1点と反則金6,000円
一方、保護の規定ははっきりしている。
高齢運転者標識を付けた普通自動車に対して、危険防止のためやむを得ない場合を除き、幅寄せや割り込みをした運転者は処罰される。根拠は道路交通法第71条第5号の4で、初心運転者等保護義務違反として扱われる。
科される内容は次のとおりになる。
- 5万円以下の罰金
- 反則金は大型自動車と中型自動車等が7,000円、普通自動車と自動二輪車が6,000円、小型特殊自動車が5,000円
- 基礎点数1点
金額としては大きくない。ただ、ゴールド免許を持っている人はこの1点で免許の色が変わり、次回の更新以降、任意保険の割引が受けられなくなる。反則金以上の負担になることが多い。
この規定は高齢者マークだけのものではない。初心者マーク、聴覚障害者マーク、身体障害者マークを付けた車にも同じように適用される。
何をすると1点になるのか
条文は幅寄せと割り込みという二語で書かれている。実際の運転でどの動作が該当するのかを見ておく。
幅寄せにあたる行為
隣の車線から、相手の車の側方へ寄せていく動作になる。相手が進路を維持できなくなる、あるいは危険を感じて減速や回避を強いられる状態を作れば該当する。
並走しながら車体を近づける、車線の中で相手側へ寄って走る、路肩側へ押し出すような動きをする。速度を落とさせる目的で幅を詰める行為も含まれる。
接触しなくても成立する。相手が動かざるを得ない状況を作った時点で、対象になる。
割り込みにあたる行為
前方へ無理に入る動作を指す。追い越したあと、相手が減速しなければならない距離で戻る、渋滞の列で強引に頭を入れる、車線変更で相手の直前に割り込む。
追い越し自体は問題にならない。問題になるのは、抜いたあとの戻り方になる。ミラーで相手の車全体が見える距離まで進んでから戻れば、通常は該当しない。
危険防止のためやむを得ない場合は除かれる
条文には除外がついている。前方に落下物があって避けた、緊急車両に道を譲った、といった場合は該当しない。
ただし、急いでいた、相手が遅かった、という事情は除外に入らない。判断されるのは目的ではなく、相手を危険にさらしたかどうかになる。
マークを付けた車の周囲には安全な空間ができる、と感じている人がいた。制度としては、その空間を法律が守っている形になる。
追い越しそのものは違反にならない
禁止されているのは追い越しではない
ここを誤解している人が多い。高齢者マークを見た瞬間に、抜いてはいけないと思い込んでいる人がいる。
条文が禁じているのは幅寄せと割り込みであって、追い越しではない。車線を分けて安全に抜き、十分な距離を空けてから戻る分には、何の問題もない。
前が遅くて後続が詰まっているとき、後ろで我慢し続けるほうが安全とは限らない。要点は、抜くかどうかではなく、抜いたあとにどう戻るかになる。
追い越し禁止の場所は別の規定になる
ただし、場所による制限は別にある。追い越し禁止の標識がある場所、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂、車両通行帯のないトンネル、交差点、踏切、横断歩道と自転車横断帯およびその手前30メートル以内では、追い越しができない。
これは相手が高齢者マークを付けているかどうかと関係なく適用される。違反すると違反点数2点、普通車の反則金9,000円になる。
対向車が来ているのに追い越しをかけ、あわや事故という場面を見た人がいた。この場合、危険なのは高齢者マークの有無ではなく、対向車線に出る判断のほうになる。
初心者マークとの決定的な違い
若葉マークは表示義務違反で1点
初心者マークは付けていないと点数を引かれるのに、高齢者マークは引かれない。この差を不公平だと感じる人がいる。
指摘は正確だ。初心運転者標識は、普通免許を受けて1年を経過していない人に課された表示義務で、こちらは適用が停止されていない。表示せずに運転すると、違反点数1点、反則金4,000円が科される。
高齢者マークは条文が眠っている
高齢者マークにも、義務の条文自体は存在している。道路交通法第71条の5の第2項が、75歳以上の運転者の表示義務を定めている。
ところが2009年4月24日の改正により、この規定は当分の間適用しないとされ、即日施行された。根拠は道路交通法の附則第22条になる。義務の条文が残ったまま、適用だけが止まっている状態にある。
もし附則第22条が削除されるなどの法改正が行われれば、高齢運転者標識表示義務違反として違反点数1点、反則金4,000円が復活する。新しく法律を作る必要はなく、眠っている条文を起こすだけで足りる。
義務化された時期も実在した。2008年6月1日から2009年4月24日までの11か月に満たない期間で、罰則付きの義務だった。それが撤回されたまま現在に至っている。
苛立ちが25点に変わる線
危ない運転をする車の後ろについてしまったとき、注意しておきたいことがある。
信号の変わり目で急加速と急減速を繰り返す車の後ろを走って怖かった、という声があった。こうした場面で車間を詰めたり、パッシングをしたり、追い越して前で減速したりすると、こちらの側の処分が跳ね上がる。
妨害運転罪は、他の車両の通行を妨害する目的で一定の違反行為をした場合に適用され、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反点数25点、免許取消となり欠格期間は2年になる。高速道路で相手を停止させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、35点、欠格期間3年に上がる。
対象となる類型には、車間距離不保持、進路変更禁止違反、追越し違反、急ブレーキ禁止違反、通行区分違反、警音器使用制限違反、減光等義務違反などが含まれる。
1点で済む話と、25点で免許が消える話が、同じ場面から分岐している。前が遅いという事情は、この判断を軽くしない。危険を感じたら、安全な場所に避難してから110番通報し、ドライブレコーダーの映像は加工や消去をせずに保管する。
罰則を求める声と、現在の制度
明らかに高齢の運転者なのにマークを付けておらず、車体に傷やへこみが多い。それを見て、罰則ありでいい、と感じた人がいた。初心者マークと同じように義務化して、2点と反則金15,000円くらいにしてほしいという意見もある。
一方で、任意のままでいいという声もある。義務になれば、選ぶ自由も、貼らない自由もなくなる。
制度の重心は、いま標識ではなく免許の更新手続きへ移っている。2022年5月13日施行の改正道路交通法により、75歳以上で過去3年間に一定の違反歴がある人には運転技能検査が導入された。実際に運転して採点を受け、合格しなければ免許を更新できない。運転できる車を安全機能付きに限定するサポートカー限定免許も設けられている。
見た目で示す標識より、運転能力を直接確かめる方向へ動いている。標識の義務化が近く優先課題になる見込みは、いまのところ高くない。
家族が付けるのを拒む場合も、法律を根拠に押すことはできない。代わりに使えるのは、付けた車への幅寄せや割り込みは相手側の違反になるという事実になる。守られる側の話として伝えると、受け入れられやすくなる。
高齢者マークを付けないと違反点数はつきますか
つきません。表示は70歳以上の運転者への努力義務で、付けていないことへの罰則や反則金はなく、表示するかどうかは本人の判断に委ねられています。義務の条文自体は残っていますが、2009年4月24日の改正により当分の間適用しないとされています。
マークを付けた車に幅寄せや割り込みをすると何点ですか
基礎点数1点で、5万円以下の罰金、または反則金が科されます。反則金は大型自動車と中型自動車等が7,000円、普通自動車と自動二輪車が6,000円、小型特殊自動車が5,000円です。ゴールド免許の場合は次回更新で免許の色が変わり、任意保険の割引も受けられなくなります。
どんな行為が幅寄せや割り込みにあたりますか
幅寄せは、相手の側方へ寄せて進路の維持を妨げ、減速や回避を強いる行為です。接触しなくても、相手が動かざるを得ない状況を作れば該当します。割り込みは前方へ無理に入る行為で、追い越したあと相手が減速しなければならない距離で戻ることも含まれます。
高齢者マークの車を追い越すと違反になりますか
追い越し自体は違反ではありません。禁止されているのは幅寄せと割り込みなので、車線を分けて安全に抜き、ミラーで相手の車全体が見える距離まで進んでから戻れば問題ありません。ただし追い越し禁止の場所では別の規定が適用され、違反点数2点、普通車の反則金9,000円になります。
初心者マークとはどう違うのですか
初心運転者標識は普通免許を受けて1年を経過していない人への表示義務で、適用が停止されていないため、付けていないと違反点数1点、反則金4,000円が科されます。高齢者マークは義務の条文が残ったまま適用が止まっており、罰則がありません。一方で、どちらのマークを付けた車に対しても、幅寄せや割り込みをした側には同じ規定が適用されます。
危険防止のためなら幅寄せしても違反になりませんか
条文には、危険防止のためやむを得ない場合という除外があり、落下物を避けた、緊急車両に道を譲ったといった状況は該当しません。ただし、急いでいた、相手が遅かったという事情は除外に含まれません。判断されるのは目的ではなく、相手を危険にさらしたかどうかです。
遅い車に苛立って車間を詰めるとどうなりますか
妨害運転罪に該当すると、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反点数25点で免許取消となり、欠格期間は2年です。車間距離不保持、進路変更禁止違反、追越し違反、急ブレーキ禁止違反などが対象類型に含まれます。前が遅いという事情は処分を軽くしないため、危険を感じたら安全な場所に避難して110番通報してください。
家族がマークを付けてくれません。何と言えばいいですか
努力義務なので、法律を根拠に押すことはできません。危ないから付けてほしいと伝えると運転能力の否定として受け取られるため、マークを付けた車への幅寄せや割り込みは相手側の違反になるという事実を伝えてください。守られる側の話として提示すると、受け入れられやすくなります。

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